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この特集は、相馬直樹によるサッカーの特集です。日本代表DFとしても活躍した相馬氏ならではの視点、切り口によるW杯の試合をはじめ、国内Jリーグなど国内外の試合レポート、見どころなどをお届けします。
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2007年05月18日
細貝の”熱” ~U22vs香港戦水曜に行われた北京五輪予選vs香港戦(香港スタジアム)のゲームでは、チームが躍動した非常にいい一戦であった。すでに最終予選への切符を手にしているU22日本代表にとって、このゲームはとても難しいものであったはず。消化ゲームとなってしまいがちな状況の中、こうしたゲームを圧倒的に勝ちきれたことは非常に評価できることであろう。 この日のスタメンはGK西川(No.12=大分)。そして4バックに右から細貝(No.2=浦和)、青山直(No.3=清水)、伊野波(No.5=東京)、本田圭(No.8=名古屋)を並べる。ダブルボランチには本田拓(No.16=法大)と梶山(No.10=東京)が入り、攻撃的MFに水野(No.18=千葉)と家長(No.14=G大阪)が入る。前線には平山(No.9=東京)と李(No.17=柏)が2トップを組んでのスタートとなった。対する香港は4-5-1といっていいような守りを意識した布陣をしいて、日本を迎え撃ってきた。 キックオフ直後から日本が主導権を握りながら攻めていく。今予選で初めて採用した4バックだったが、両サイドバックがそれこそウイングバックかのように積極的に攻撃に絡んでいく。そうした流れから、さっそく7分、李のゴールが生まれた。右サイドをオーバーラップした細貝がインステップキックでの綺麗なクロスをファーサイドに上げ、3列目から入り込んだ梶山が丁寧にヘッドで折り返す。そのボールを地面に落とさず左足ダイレクトボレーで李が叩き込み、素晴らしい形で先制点を奪ったのだった。 機能した4バック 開始早々から、自分の前に入る選手を追い越したり、サポートしたりして非常にいいクロスを入れていた細貝。もともとはボランチを本職とする選手だが、レッズではストッパーとして頭角を現してきていた。そういった意味ではこの日は右サイドバックという不慣れなポジションであったが、非常に積極的なプレーを90分通して披露してくれた。 左サイドバックに入った本田圭も、同様に慣れないポジションをよくこなしていた。相手が格下だったということもあるが、常に攻めの意識を持ち続け、2点目のアシスト、3点目の強烈なFKでのゴールと、得点に絡む働きで実力を見せつけた。だが点に絡んだこと以上によかったのが、バランスの取り方だった。中盤のボランチの位置に入り込んだり、サポートしたり、中央への飛び出しをしたりと、ただ外をえぐるだけのアイディアだけでなく、幅広いプレーを見せてくれた。 こうした流動的な動きが出てきたのも、この日のシステムとも相関があるはずだ。本田拓の気の利いたポジショニングが積極的な両サイドバックの攻撃参加を可能にしていたし、家長、水野の流動的な動きも非常に効果的だった。特に水野は右サイドに張ってプレーする印象があるが、中央に入っても非常に柔軟なプレーを見せてくれていた。 いい時間での先制点、前半ロスタイムには平山のヘディングで2点目。後半7分には例の本田圭の魔球と呼んでいい強烈なFKで3点目。その後にも水野のダメ押し点と理想的な点の取り方をしていった。守備でも大きなピンチもなく、非常に安定感のあるゲーム運びができていた。 リズムの悪いときにこそ欲しいリーダーシップ ただ敢えて細かいことを指摘すると、前半ゴールを奪ってから2点目までの間が空きすぎてしまったこと、その間のリズムがなくなってしまった部分などが挙げられる。前半終了間際に加点できたからいいものの、実際にその時間帯はまったりとした空気が流れてしまっていた。後半開始から動きがもう一度キビキビしだしたことから考えても、ハーフタイムに反町監督からの喝が入ったことは容易に想像できる。今後迎える最終予選では、ピッチの中で、選手たちで、こうしたムードを変えなければならないときが必ず来る。厳しいことを言うようであるが、このあたりは一つの課題としてこれからにつなげていってほしい部分である。 だがその後半のサッカーはいい内容であったと思う。前線からのチェイス、プレッシングもかなり徹底され、ボールを奪った後のボールを追い越すための動き出しも早くなっていた。その影響もあって、スペースを創るための動きが多くなり、その出来たスペースを使った楔や、スルーパスという狙いなども見ることが出来た。 チャンスをもらった選手たちの“熱” また後半から起用された選手たちの積極性も目に付いた。ゴールという結果こそなかったが、何度も最前線にまで飛び出していく増田(No.7=鹿島)など、アピールしようという気持ちの見えるプレーが続いたように思う。彼らや、細貝、李といった、まだポジションを確保できていない選手たちの頑張りが、この試合通して目立っていた部分であり、チームをまさしく活性化させていた。ゴールという結果こそ平山、本田圭、水野と主力と呼ばれる選手たちのものとなったが、チャンスをもらった選手たちの頑張りが彼らの力を引き出した部分があったはずである。特に細貝の“熱”は強烈だった。「ゲームをしたい」という欲求がモニターの上からも迸っていたのを、テレビで観戦した人は感じたことだろう。その“熱“は、きっと周りの選手たちにもいい影響を与えたはずであった。 これまでと同じメンバーを招集したことからも分かるように、当初このゲームは、チームの熟成という位置付けをされていたはずだった。だが水本(No.4=千葉)が膝を痛めて途中離脱したことによって、反町監督は熟成というよりもテストという方向を選んだ。4バックの採用、それに伴う中盤の構成の変更と、今後に向けたオプションをテストするいい機会になったわけだが、果たして結果は、災い転じて福と成すと言おうか、大きな成果を得ることが出来たのだった。 だが、今後はもっと攻撃力のあるチームとの対戦もあるだろうし、それこそ凌いでカウンターという戦いを強いられるゲームも出てくるかもしれない。そう見ると、この4バックも守備においては不確かな面も多いという指摘もあるかもしれない。だが4バックにしたことによって、積極性や流動性を引き出せた事実は見逃せないし、間違いなく最終予選では大きなオプションとなるはずだ。 次のマレーシアとの対戦では、累積警告による出場停止で主力が数名出場できない。最終予選に向けて、新しい選手がさらに起用される一戦となるはずだ。ここでも今回のように高いモチベーションを持ったチャレンジャーがチームを刺激して、いい意味での化学反応が起こることを期待したいと思う。
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