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この特集は、相馬直樹によるサッカーの特集です。日本代表DFとしても活躍した相馬氏ならではの視点、切り口によるW杯の試合をはじめ、国内Jリーグなど国内外の試合レポート、見どころなどをお届けします。
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サッカー特集by相馬直樹

おぼろげながら見えてきた北京 ~U22代表・シリア戦~

 北京五輪2次予選グループ中、最も実力のあるU22シリア代表を聖地・国立に迎えたU22日本代表。予選が始まってからここまでの2戦では、大切な勝ち点を着実に積み重ねてきてはいるものの、内容的には物足りなさの残っていた反町ジャパンであったが、この日のゲームは、今後に向けての明るい話題を提供してくれる結果、内容だったのではないだろうか。

 日本のスタメンを見てみよう。GKはケガから復帰した西川(No.12)。最終ラインは右に青山(No.3)、センターに伊野波(No.5)、左に水本(No.4)といういつもの3人が入る。中盤はダブルボランチに本田拓(No.16)と梶山(No.10)の2人。アウトサイドには右に水野(No.18)、左に本田圭(No.8)が入る。そして前線は、MF家長(No.14)を2列目に配置して、平山(No.9)と李(No.17)の2トップという、この予選初めての形で臨むこととなった。対するシリアは、昨年末のアジアカップで対戦したときと監督も選手も大きく変わっており、この日は3-5-2という布陣で臨んできた。

 序盤から日本は、2トップを採用した攻撃ユニットがそのよさを見せ、攻撃を組み立てていく。だが、立ち上がりのシリアはそれ以上に攻撃の意欲が高く、日本にとっては危ない時間帯であった。シリアは、ボールを追い越す動きを多用するなど、積極的に人数をかけて攻撃に出てきていた。ファールで無効となったが、FWイブラヒム(No.10)がゴールに蹴りこんだシーンなど、ペナルティボックス付近までボールを運ばれてしまった回数も多く、そういった意味では、先にゴールを奪われてしまってもおかしくない立ち上がりであったと言える。

だがその時間を、安定感のあるセーブを見せたGK西川を中心にしのいでいくと、2トップと1トップ下という、新しい攻撃ユニットを中心とした攻めが形になり始めていった。

自由に動いてリズムを作った家長

その中でも最大のポイントとなっていたのは、家長だった。ここ最近の家長は、ガンバ大阪でのゲームも含め、アウトサイドというよりもトップ下のポジションでプレーすることが増えている。そうしたポジションにおいて、相手のDFラインと中盤との間のスペースでボールを受けることができ、チームの攻撃のリズムを作ることができる選手なのだ。彼が自由に動いてボールを引き出すことによって、チーム全体が落ち着いて攻撃に移れるようになっていたのは見逃せないところだ。

シリアは、最終ラインを浅くしてそのスペースを消そうとはしていたのだが、それに対して2トップの裏への動きだしと、家長の自由に動いてボールを受けるという、ギャップの作り方がうまくはまっていて、シリアはなかなか日本の前線3人を捕まえられずにいた。序盤、シリアがペースを掴んでいたものの、攻撃自体は期待を抱かせる流れを見せていたのだった。

 そうした中、日本に待望の先制点が生まれる。16分のことだ。右サイドで水野がプレッシャーを受けながらも、逆サイドにいた家長まで一発のサイドチェンジをする。このサイドチェンジが素晴らしかった。家長がボールを受けた瞬間には左サイドの本田圭と2対1の状況ができていたのだ。家長は外を追い越していく本田圭をおとりに使って、内側に切れ込み右足(!)でミドルシュート。ファーポストの一番上の、GKからしたらどうしようもないところに吸い込まれていった。見ていた誰もが、「右足に持っていったら、ダメだ」と思ったであろうが、いい意味で期待を裏切るスーパーショット。水野のサイドチェンジ、本田圭のオーバーラップ、家長の思い切りと、3つの良さが生み出した貴重な先制点であった。

 そしてその8分後には、水野のFKから平山が3戦連続のゴールを頭(肩?)で奪うと、シリアは攻撃のキレ、そして意欲も失ってしまった。序盤から飛ばしてきた、シリアのモチベーションを奪うのに十分な先制点、そして追加点であった。攻撃面でのシリアは非常にスキルもあるし、連動性を意識したサッカーを展開しようとしていたのだが、守備での甘さは致命的であった。昨年末のアジア大会での対戦のときにもそうした傾向は見受けられたが、この日もマーキングの甘さ、ボールへのプレッシャー不足を露呈してしまっていた。

 そうした中、3点目を奪いに日本は攻め続けるが、2点取ったことで余裕が出たのか、それともプレッシャーが弱いことによって、球離れが悪くなってしまったのか、人とボールの動きが悪くなってしまう。その影響もあるのか、ラストのプレーの精度も下がってしまい、なかなか追加点を奪えないまま、前半を終了する。アタッキング・サードでの精度という、いつもながらの課題が顔を覗かせてしまった。

 後半の立ち上がりも、前半終盤同様、まったりとした感じで進んでしまったが、カレン(No.11)の投入でゲームが再び動き始める。前半から積極的に攻撃を牽引した家長だったが、疲れからか後半消える時間が長くなってしまい、チーム全体の攻撃のスイッチが入らなくなってしまっていたのだが、代わってカレンが攻撃のリズムを作るようになったのだった。幅広い動きで、抜ける動きと創るプレーの両方を見せ、さらにはいい平山との関係も見せ、本当にいいプレーをしてくれた。そのカレンの素晴らしいパスから平山の3点目が生まれたのも偶然ではなかった。

見えてきた“チームのまとまり”

 その他にもこの日はたくさんの積極的なプレーを見ることができた。水本の再三再四に渡るオーバーラップや、前半終了間際のプレーに象徴される、本田拓の激しく戦う姿勢など、個人の頑張りが目に付いた。しかしそれ以上に印象的だったのは、先制ゴール後の選手たちの姿だった。ビューティフルゴールを決めた家長に、ほぼ全員が集まってきて、祝福をしていたのだった。これまで彼ら世代のすべてのゲームを見てきたわけではないので、はっきりしたことは分からないが、このチームではこうした姿を見せたことはあまりなかったのではないか。そういった意味では、チームとしてのまとまりが出てきたのではないのだろうか。そうした、いい一面が表れたシーンだったのではないかと思う。

 もちろん、サッカー自体としても、最後までコンパクトなサッカーの意識が保たれており、チームとして機能していた。落ち着いたビルドアップをして、前線の動き出しに合わせたり、その動きを使って中盤でフリーになる家長や、李、またはカレンが受けたりして、そこに周りがさらに絡んでいく。そうした同じ絵を描いてプレーできている時間が長かったのではないかと思う。

 本当に素晴らしいゲームを披露したU22日本代表であったが、もちろん課題がなかったわけではない。これまでも失点の多かったリスタートの守備では、0に抑えたものの、危ない形もいくつかあった。また、ビルドアップ時にパスコースを作る意識が高かったことも影響しているのだろうが、守備に切り替わったとき、最初の楔に対して甘いことが何度か見受けられ、攻撃しているときの守備の準備が物足りなかったことも気になる点だ。

 そしてなんと言っても、3点取った後に、もう2点は確実に取らなければならなかったことだ。この日は3点のリードがあったかもしれないが、決めるべきところは決める。これを常に繰り返していかなければならない。この日の勝利で2次予選通過は一気に近づいたが、このあともっと厳しい最終予選が待っている。サッカーの世界では言い尽くされてきたことであるが、決定力、そして集中力を高めていってもらいたいものである。

真価の問われるアウェイでのシリア戦

 今回はシリアのコンディション不足や、守備の甘さというものもあった。あれだけ自由になっていた家長をいつまでも捕まえられないのは、あまり考えられないこと。リベンジに燃えてくるであろうアウェイでのシリア戦は、もっと厳しいものになるはずだ。真価の問われる次戦、反町ジャパンはどんなサッカーを見せてくれるのだろうか。


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