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この特集は、相馬直樹によるサッカーの特集です。日本代表DFとしても活躍した相馬氏ならではの視点、切り口によるW杯の試合をはじめ、国内Jリーグなど国内外の試合レポート、見どころなどをお届けします。
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サッカー特集by相馬直樹

元日決戦 ~天皇杯決勝 浦和レッズvsガンバ大阪~

 元日決戦、浦和レッドダイヤモンズvsガンバ大阪の天皇杯決勝のレポートをしよう。Jリーグ最終節でもタイトルを直接対決で争った両チームの対戦。今季最後の天皇杯決勝でも激突するというまさに頂上決戦であった。

 Jリーグ覇者のレッズはケガ人などからこの天皇杯はベストメンバーが組めなかったが、選手層の厚さもあって決勝まで勝ち進んできた。この日のスタメンはGK都築(No.23)、最終ラインは中央に内舘(No.19)、右細貝(No.3)、左ネネ(No.5)と配した3バック。サイドには右の平川(No.14)、左の相馬(No.16)、ボランチには鈴木(啓)(No.13)と山田(No.6)が入る。ワシントン(No.21)のいないワントップには永井(No.9)が入り、トップ下に小野(No.18)とポンテ(No.10)が構える形でスタートした。

対するガンバはリーグでの借りを返すという強いモチベーションの中、順調に元日決戦まで駒を進めてきた。ベストといえるメンバーの揃ったガンバ。GK松代(No.1)、中央の宮本(No.5)が實好(No.4)、山口(No.6)を左右に従えた3バック。両サイドは右に加地(No.21)、左に家長(No.14)、ボランチの明神(No.17)、遠藤(No.7)が中盤を支える。二川(No.10)のトップ下と播戸(No.11)、マグノ・アウベス(No.9)の2トップといういつもの形だ。

攻のガンバ、守のレッズ

 ゲームが始まると序盤からガンバのペースで進んでいく。5分までの間に加地が2度深く切れ込むなど、高いモチベーションからガンバが押し込む。その中でポイントとなったのが、レッズの3バックとボランチの間での二川、マグノ・アウベスの引き出しだった。マークからうまく離れながらそのスペースでボールを受け、確実に攻撃の基点を前に作っていく。そこで前を向けるケースも多く、序盤からボックス内に数多く侵入していった。

また闘莉王(No.4)、坪井(No.2)、堀之内(No.20)の抜けた慣れない3バックに対して、播戸が我慢強く前線に張り付き、ラインを押し下げることに成功していたことも忘れてはならない。それにより二川、マグノ・アウベスのスペースが広くなっていたのだった。また遠藤も守備を明神に任せて、積極的にそのスペースに絡んでいくことで、攻めの分厚さを作って完全にペースを握っていた。

対するレッズは、あまりにリズムが取れないことに焦ったはずだ。だが、徐々に落ち着きを取り戻して、全体が守備のモードにシフトしていった。鈴木(啓)、山田のダブルボランチが前から行くよりも、3バックの前のスペースを埋めることでゲームを落ち着かせる。このあたりが今季苦しいゲームでも勝ちを拾うことができるようになったレッズの強さなのだろう。リズムが悪いと見るや、全員の意思統一の元、守備にシフトしながら体勢を立て直す時間を作る。どんな形のゲームでも勝ちきるという自信がレッズには備わっていたといえるだろう。

しかし、今季一度も勝てなかったレッズをどうしても倒したい、リーグでのリベンジを果たしたいという強いモチベーションから、ガンバは攻撃の手を緩めない。引いたレッズに対して、ポゼッションしながら短いスルーパスで播戸の飛び出しをうまく使ったり、マグノ・アウベスの個人技からの突破や、サイドの崩しに後ろから侵入してくる遠藤のシュートなど、30分前あたりから立て続けにシュートの雨を浴びせる。

しかしレッズゴールにはGK都築が鍵をかけていた。難しいシュートのセーブもそうだが、崩された形になっても決定的なシュートが“なぜか”都築の正面を衝く。ポジショニングのよさ、最後に身体を寄せたDF陣という要素を含めて、ゴールを割らせない空気が漂い始めていた。都築自身も“のってきた”状態に入って行ったのではないだろうか。こうしたビッグゲームでビッグセーブをできるGKといえば川口の名前が頭に浮かぶが、まさにこの日の都築はそうした状態に入っていた。あれだけ攻勢に出られた前半を0点で抑えたことが、このゲームの流れを決めたといってもいいだろう。

レッズも時折ポンテを軸に反攻する。しかしガンバ3バックの自分たちが攻撃している時の守備の準備がよくできていて、いい形でのレッズの攻撃を許さない。特にボランチ明神の働きが素晴らしかった。3バックと明神でレッズの前線3人をチェックしていたのだが、高い集中力で攻撃から守備の切り替えを迅速にこなし、レッズの攻撃の芽をことごとく摘んでいた。

ガンバは終始リズムを掴みながらゲームを進めていたが、なかなか点が入らない。その中で数多くあったセットプレーがゴールに結びつかなかったことも痛かった。セットプレーから今季ゴールをよく奪った山口もいるし、なんといっても日本屈指のプレースキッカー遠藤がいる。こうした緊迫感のあるゲームほどリスタートが勝敗を分けることが多いものだが、残念ながらこの日の遠藤のキックはもうひとつ思ったようなボールではなかったようだ。ロスタイムでのFKでもそうだったように、ここ一番のところで彼の持っている最高のキックを見ることができなかった。

選手交代のメッセージ

選手交代もひとつのポイントだったかもしれない。ガンバは結局一人も交代せず、レッズは負傷した小野を15分ほど引っ張った。足を引き摺り気味だった小野がピッチにいた時間帯、なぜかガンバは決定的な形まで持ち込めなかった。90分通して押し込み続けたガンバであったが、その時間帯ほぼ10人であったレッズに対し、大きなチャンスを作れなかった。

この試合ブッフバルト監督は小野と心中するつもりだったかもしれない。リーグも含め、腐らずに優勝に向けてチームを支え続けた小野に対する感謝だっただろう。もしかしたらこの温情采配が敗北を呼び込んでしまうのではという思いも頭をよぎったはずだ。また、残りの10人の想いも小野に最後までピッチに立っていて欲しいというものだったのではないだろうか。結局再度足を痛めて小野はピッチを去ることになってしまったが、その気持ちこそが高い集中力を生み、団結力を増し、その時間にガンバにビッグチャンスを与えなかったのではないだろうか。またこうした気持ちが、モチベーションの面では上回っていたはずのガンバに対抗するメンタル的な強さを引き出していたのかもしれない。

対するガンバ西野監督は先発の11人、自分たちのシステム、そしてガンバのスタイルにこだわった戦いを最後までし続けた。リードされてからの時間にパワープレーを選択せず、そのためのDFシジクレイ(No.2)も投入しなかった姿勢にもこのこだわりはうかがえよう。この日の内容ならば必ず1点は取れるという確信もあっただろうし、崩しきって欲しいという強い願いもあっただろう。これは選手たちも同じ思いであったに違いない。攻守ともにガンバペースであれだけ進んでいたのだから当然であったはずだ。しかし徐々にガンバの焦り、苛立ちも見え隠れし始めていた。最終ラインの宮本、山口の攻撃参加の回数も増え、徐々に攻撃への意識が高まっていく中、87分の決勝点が生まれたのだった。

小野と交代してピッチに立ったFW岡野(No.30)が山口、宮本の間のポジションから裏へ抜け出す。これまた途中出場のMF長谷部(No.17)のフィードからのカウンターだ。その折り返しがスライディングに入った宮本の背中に当たってコースが変わる。正しいポジションに入っていた實好であったが、コースが変わったことで一瞬反応が遅れ、永井がニアサイドを破って貴重な決勝点を挙げた。

サッカーはゴール数を争うスポーツで、シュート数を争うわけでもキープ率を争うわけでもない。いかにしてゴールを守り、ゴールを挙げるのか。あれだけ素晴らしい攻撃、そして守備を披露していたガンバが敗者となってしまうサッカーというスポーツの怖さ。決定力とは使い古された言葉のようだが、私がこの世界にいる以上、いつまでもどこまでも付いて回る問題であると再認識させられた。だが、この日のガンバは今季最高のゲーム内容であっただろうし、かならず来季に繋がるゲームとなったはずだ。特に前半25分過ぎからの10分間ほどで見せた崩しは、引いた相手に対してもボックス内に入り込む手段があるということを示してくれたと思う。

 レッズはこの天皇杯で今季出番の少なかった選手たちにチャンスを与えるブッフバルト監督の采配で、頂上まで登り詰めた。ストレスの溜まる一年であったであろうそうした選手たちが、自分たち自身で切り開いた未来への道。この自信が来季のチーム内のポジション争いを激化させ、さらにチーム力を高めて、Jリーグ、天皇杯連覇、そしてACL(アジア・チャンピオンズ・リーグ)まで獲ることができるのか。ブッフバルト監督を引き継ぐオジェック新監督のチーム掌握がどれだけできるのかに注目していきたいところである。


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