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この特集は、相馬直樹によるサッカーの特集です。日本代表DFとしても活躍した相馬氏ならではの視点、切り口によるW杯の試合をはじめ、国内Jリーグなど国内外の試合レポート、見どころなどをお届けします。
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サッカー特集by相馬直樹

精神的要素の大きさ ~福岡vs甲府~

 今季Jリーグ最終戦アビスパ福岡vsヴァンフォーレ甲府の試合を解説して来た。この試合でJ2への自動降格か、入れ替え戦という残留へ可能性を残せるのかという、アビスパにとっては非常に大切な一戦。残留も確定していた甲府にとっては、のびのびとやれるゲームであったが、連敗中ということもあり、負けて今年のリーグを終われないという気持ちもあったはずである。

 その試合開始直前に福岡にアクシデントが起こる。左サイドの攻撃の中心である古賀(No.14)が、アップ中に左足を傷め、突如メンバー変更となったのだった。スタメンはGK水谷(No.1)、4バックは右から吉村(No.15)、千代反田(No.5)、宮本(No.2)、アレックス(No.3)。ダブルボランチにホベルト(No.8)と佐伯(No13)。右MFには久藤(No.10)、左MFには急遽古賀に代わって薮田(No.9)が入った。そして2トップには布部(No.6)と飯尾(No.34)でスタートすることになった。対する甲府はGK阿部(No.1)、4バックが右から杉山(No.32)、アライール(No.15)、津田(No.3)、山本(No.4)。ワンボランチに林(No.31)が入り中盤を石原(No.7)、保坂(No.26)と形成。前線は中央に茂原(NO.33)、右に山崎(NO.23)、左にバレー(No.16)という形で臨んできた。

 ちなみに33節終了時点の17位福岡と16位セレッソとの勝ち点差は1で、得失点差は並んでいるという状況。負けたら無条件で降格決定というのが福岡の置かれた立場であったことは、ここで記しておく。

ゲームが始まると、この試合に懸ける気持ちの強さで、ホームの福岡がリズムを掴む。球際の厳しさ、ルーズボールへの寄せと、中盤での争いで先手を取る。またボールを奪うと、とにかく前に速く入れる意識があり、甲府得意のプレスを出させなかった。前節披露した甲府の前線からの強烈なプレスを見ることが出来ないぐらい、ボールを速く前に出すことが徹底されていた。そのボールに対して上背のそれほどない布部がよく競り合ってボールを落とし、飯尾が拾うなど、前線も頑張る。そうして作ったポイントに久藤、薮田も参加して、ボックス周辺までうまくボールを運んでいた。

 また守備面ではラインをきちんと設定し、下がらずにブロックを作ることに成功。甲府の3トップに対して、3人が厳しくマークし一人が必ず余るという形で、楔すら簡単に入れさせない守備ができていて、甲府になかなか攻撃の形を作らせなかった。

 それでも甲府はロングボールに反応した山崎がビッグチャンスを1度作るが、福岡はGK水谷の落ち着いたセーブで難を逃れる。ああした1対1の局面では、GKは先に動かずに、重心が後ろに下がらないように我慢できるかが大きなポイントだが、水谷は本当に落ち着いてこのピンチを救った。その前にもイレギュラーした処理の難しいクロスを大きくはじくなど、とても大きな仕事をした。

 いい流れながらも、福岡はなかなかゴールが出来ないまま前半終了。そうして折り返した後半開始早々、甲府に得点が生まれた。ハーフタイムにはセレッソ1点ビハインドの情報も入ったはず。ここは憶測でしかないが、どこかで「今日はこのまま行けば、何とか勝てるかもしれないし、引き分けでも入れ替えに行けるんじゃないか」というような気持ちが生まれてしまったのではないだろうか。0-0でもOKという気にさせる情報が、前半までの勢いを削いでしまった部分があったのかもしれない。

 だが後半早々での失点は、福岡の闘争心に火をつける意味では意外とよかった。どうしても1点が必要という立場になって、前へ出て行く勢いが再び表れてきたからだ。だが、甲府もその勢いに負けずに、ボールをうまく回し始める。局所局所で三角形を作り、ワンボランチの林を使いながら、ワンタッチでボールを動かして、福岡の勢いをかわしていこうとする。

 しかしゲームの流れがもう一度福岡に傾く出来事が起きた。アライールの退場だ。球際に非常に厳しく来ていた福岡に対して、前半から全く下がらなかったアライール。その影響もあって、前半すでにイエローを1枚もらっていた。2枚目のシーンはそれほど荒くなかったように見えるが、1枚カードを持っていたことを考えると、もう少し落ち着きたかったところであった。

 相手が1人減ったことも、福岡の「1点を取りに行く」という攻撃への推進力となっただろう。前半のように前に前にボールを進められるようになってきた。しかし甲府とすれば10人になったことで、守備意識が高まったことも間違いない。一発のあるバレーを前線に残し、残りの9人で守りきろうという意識が出てきたこともあり、福岡はボールを支配しながら甲府陣に入るものの、シュートまで至らない。

 するとそこまではバランスを取って攻撃は控えていた吉村、アレックスの両SBが高めのポジションを取り、サイドで基点を作りながら攻めに参加するようになる。そうすることで突破までいかないものの、サイドでファールを取ったり、CKを取るという回数が増えていった。

 そのリスタートから価値ある同点ゴールが生まれる。68分右CKを久藤が蹴ると、ニアサイドで競ってそれたボールに、MF佐伯が飛び込んできて、ハーフボレーで強烈な一発をゴールに叩き込んだ。数的優位になったとはいえ、なかなか決定的チャンスを迎えられなかった福岡にとってはまさに起死回生の一発であった。

 それでも福岡の選手には、セレッソが1点ビハインドであることは伝わっていたはず。もしセレッソが1点取って追いつけば、自動降格となることも頭には入っていただろう。そういう意味では、10人の甲府を相手に何とかリードを奪って、勝ち点3を加えてセレッソの結果を待ちたかったはずである。しかし、現実には10人相手になかなかボールもつながらず、五分に近い展開になってしまった。前半から飛ばしていた疲れもあったと思うが、何とか守りきろうという気持ちの部分が強く出すぎたのだろう。守ろうとして守りきれたことは素晴らしかったが、10人相手に勝ちに行かなければならなかったとも言える。こうしてみると、サッカーにおいて心理的影響がいかに大きいかというのを考えさせられるゲームであった。

 終始リズムの取れなかった甲府であったが、福岡のどうしてもという執念、気持ちの前にリズムを作れなかったといってもいいだろう。しかしそれだけでなく、攻守ともに迫力不足な面も見受けられた。甲府といえば厳しい球際の守りからタテへの早い攻撃であるが、この日、その面影は見ることが出来なかった。三角形を作ってワンタッチでうまくボールを動かすことは出来ていたものの、なかなか前に入らない。バックパスの回数が増えてしまい、結局スローダウンさせられた中で奪われて、速攻されるという場面が目立った。残留を決めてから、ポゼッションしようという意識が見られた甲府であったが、負けが増えた結果も踏まえて、来季のチームのスタイルをどうするのか、もう一度確認しなおす必要があるだろう。

最後の最後に来て手に入れた、入れ替え戦への切符。これをどう生かすのかは今週の2試合にかかってくる。福岡とすれば守備の形は整ってきている。あとはどうやって点を獲るのか。最終節で切符を手に入れた福岡と、最終節に負けて入れ替え戦に回った神戸。福岡は勢いを維持できれば残留の可能性が高まるし、神戸はどう切り替えられるのか。水曜日の第1戦が、非常に大きなウェイトを占めることだろう。


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