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この特集は、相馬直樹によるサッカーの特集です。日本代表DFとしても活躍した相馬氏ならではの視点、切り口によるW杯の試合をはじめ、国内Jリーグなど国内外の試合レポート、見どころなどをお届けします。
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2006年11月05日
ナビスコカップ決勝 ~アントラーズvsジェフ~11月3日ナビスコカップ決勝、鹿島アントラーズvsジェフ千葉のゲームを国立に見に行ってきた。どうしてもタイトルを獲りたいというお互いの強い気持ちを激しくぶつけあった末、ジェフが2-0で勝利し、2連覇を決めた試合だ。 両チームのスタメンを見てみよう。鹿島はGK曽ヶ端(No.21)、4バックに右から新井場(No.7)、岩政(No.3)、大岩(No.4)、ファビオ・サントス(No.18)。ダブルボランチに青木(No.24)と増田(No.26)、ワイドMFとして右に野沢(No.25)、左に深井(No.11)を配置。前線はアレックス・ミネイロ(No.9)と柳沢(No.13)のツートップで臨んできた。対する千葉はGK岡本(No.30)、リベロに中島(No.15)を入れた水本(No.4)、斉藤(No.3)の3バック。ボランチに阿部(No.6)と佐藤(勇)(No.7)、両アウトサイドには右に水野(No.8)、左に山岸(No.16)を起用。前線には羽生(No.22)、ハース(No.10)、巻(No.18)の3人という形でスタートした。 決勝という舞台での緊張もあっただろうか。立ち上がりはなかなかボールが落ち着かない。負けたくない気持ちが強いのか、両チームとも守備の意識が攻撃を上回っていた。鹿島は前からの積極的なプレス、ジェフもタイトなマンマークで、お互いにボールを激しく奪い合い、ボールを持っているチームが頻繁に入れ替わる立ち上がりとなった。このあたりは、ドライなピッチ状態も影響しボールの動きが悪く、ミスも増えやすかったことも関係していた。 守備では全体をコンパクトにしてゾーンを張ることによって、いい位置でボールを何度か奪えていた鹿島であったが、千葉のカウンターに対する備えもよく、なかなかそこから速い攻撃でゴールに迫ることが出来ない。 後ろからのビルドアップでは、いつものつないでいくというスタイルよりも、早く前に基点を作っていこうという狙いが見て取れた。特に柳沢の動き出しが非常に速く、さらにボールが収まっていたこともあり、そこへシンプルに合わせて、ボールを速く前に動かすということが出来ていた。だがそこから先の絡みでもう一ついいコンビネーションプレーを出せず、千葉を崩しきれない。結局前半でシュート3本と、最後のボックス内に進入できた回数は少なかった。 対するジェフはロングパスでのサイドチェンジを多用して、鹿島のプレスをかわすようになる。特に右の水野から、左の山岸もしくはハースへの一発のロングボールが効果的であった。鹿島は4バックのゾーンで守っているため、ボールと逆サイドのSBは相手FWをマークしたり、CBのカバーに入ったりするために、中央に絞らなくてはならない。そのスライドでできる外側のスペースを、長いレンジのサイドチェンジでついていこうとしていたのだった。 こうした相手のゾーンDFのマークをズラそうとするハースと山岸の連動は、他の場面でも目に付いた。ハースが一度左サイドに張るために、右SBに入った新井場がマークに付くことが多くなるのだが、ハースが中に入ったり、引っ張ったり、戻ってみたりと新井場を引き出そうとしていたのだ。そのできたスペースを狙って山岸は入り込んでいく。これは同サイドのビルドアップでも同様で、ハースが新井場を引きつけることによって、山岸のマークに野沢が奔走させられていた。このあたりは駆け引きであり、野沢が攻撃で力を発揮していれば、山岸は出て行きづらくなるのだが、前半はジェフの左サイドでのマークを混乱させる動きが効果的だったように思う。 0-0のまま折り返した後半、リズムの掴めていなかったアントラーズが攻勢に出る。前線の2人へのロングボールを前半以上に多用して、リズムを掴み始めたのだ。アレックス・ミネイロのポストプレー、柳沢の走り出しにあわせたフィードや楔で、相手陣内でのプレーを増やしていく。またハースが負傷交代したことも関係あるだろう。前半は守備に意識が行き過ぎてなかなか攻めに絡めなかった野沢が、代わって左アウトサイドに入った坂本(No.2)のウラに飛び出してチャンスに絡むようになってくる。守りでも前線からのプレスがもう一度効くようになり、ジェフを押し込む展開となっていった。 新井場からのパスに、右サイドを野沢が抜け出しシュートを打った53分。その2分後の岩政のインターセプトからの流れで、深井-アレックス・ミネイロとつないだ決定的なシーン。それ以外にもこの時間帯は相手ボックス内にまでボールを運べていた。しかし、喉から手が出るほど欲しかった先制点は奪うことが出来なかった。結局ここで点を奪えなかった大きなツケが、後で回ってくることとなってしまった。 60分過ぎから、だんだんと両チームともに間延びし始める。攻撃への意欲が両チームとも高くなった分、奪った後のカウンターが増え始めてきた。鹿島のボランチ増田がゴール前まで飛び出したり、ジェフもやはりボランチの佐藤(勇)が飛び出したりと、リスクを犯しても前へ前へという、打ち合いの様相を呈してくる。だがそういう展開こそ、走力に自信のあるジェフに傾いてきたということだった。 そうした中、ロングボールでのサイドチェンジを前半同様に多用し、サイドをついていくという狙いが、80分のジェフの先制点に結びついた。左サイドで坂本が山岸とのワンツーで内側に切れ込むと、逆サイドでフリーになっていた水野へとサイドチェンジ。水野はワントラップして、そのボールの落ち際を思い切ってゴール左へと蹴りこんだ。 ペナルティ・ボックス手前での大きなサイドチェンジで、水野がフリーで受けてシュートを打ったのは、これが初めてではない。62分の左から右サイドへの展開から、水野がファビオ・サントスをキックフェイントでかわしてシュートを打ったシーンも、まるで同じようなシーンだった。水野が自分の間合いで仕掛けたため、ファビオ・サントスは飛び込まされてしまったのだ。失点の場面では、このキックフェイントのイメージが、ファビオ・サントスには浮かんだのだろう。飛び込んではいけないという思いが、あと一歩寄せるのを思いとどまらせたのかもしれない。わずかな距離であったが、シュートコースを消しきれなかった。 その2分後の82分、水野の蹴った右CKを、ニアサイドに飛び込んだ阿部が青木に競り勝ち、決定的な追加点を奪う。鹿島も1点目でシュンとしたわけではなかっただろう。だが、この追加点の与えたダメージは、何とか追いつこうという闘争心を奪ってしまうほど大きかった。結局、千葉が上手くボールをキープして時間を稼ぎながら、優勝の瞬間を迎えた。このあたりの余裕は、昨年の優勝の経験が大きいだろう。しかし、その2点目がなければ、最後の瞬間まで1点を守ろう、1点を奪おうという、白熱した展開になっていた可能性も十分あったのではないか。 全体的に見ると、鹿島もいいゲームが出来ていたと思う。チーム全体での守備の意識や、速く前に基点を作っていくことなどが徹底されていたし、そして何よりもピッチ上に戦う姿勢がよく表れていた。 だがこの日のジェフはそれを上回っていたと言える。ジェフらしいサッカーを90分通して披露していた。動いて、スペースを作って、ということがピッチ全体で見られ、人数をかけて最前線に飛び出していくというサッカーを見ることが出来た。そして先制後も守りに入るのでなく、ダメ押ししてしまう勝負強さなども含めて、この日はジェフに流れがあったようだ。 そして敗れたアントラーズにとっては、この決勝を戦った経験がこれからの大きな財産となることだろう。決勝で敗れることのつらさは、僕も何度も経験してきたが、それは本当に残酷なものだ。この日、国立で流した涙を忘れずにいられるか。鹿島のOBとして、この敗戦が本当の意味での10冠への第一歩になることを願いたい。
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