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この特集は、相馬直樹によるサッカーの特集です。日本代表DFとしても活躍した相馬氏ならではの視点、切り口によるW杯の試合をはじめ、国内Jリーグなど国内外の試合レポート、見どころなどをお届けします。
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2006年09月02日
レフェリーに関する一考察 ~鹿島vs名古屋戦より~前回の記事で後日詳しくと書いたレフェリーのジャッジについて今回は話そう。この試合(鹿島vs名古屋戦)ではいくつか触れておかなくてはならないレフェリングが見られた。僕自身は中継席にいるのでスローも見ることが出来、指摘しやすい状況であるのだが、このゲームでは明らかなミスジャッジがいくつかあった。 特に問題だったのはPKのシーン。テレビの映像上では何が起きたのかまったく分からなかった。秋田さんにイエローが出たということで、彼に注目してみたのだが、ファウルをしていたというような痕跡を画面上で確認することはできなかった。テレビの映像だけが真実とは限らないし、レフェリーは近くで見ているのだから、彼のミスと決め付けることは出来ないのだが、どう見ても不可解であった。スタジアムで見ていた人たちにあのPKの理由が分かる人はいなかったのではないだろうか。これも変な話であるが、試合後に会った鹿島の関係者たちも、口々に「何がPKだったの?」という話をしていた。 他にも前半にこんなシーンがあった。ファビオ・サントスのFKが名古屋の選手に当たって軌道が変わりゴールラインを割った。両チームの選手たちはCKの準備に入っていくのだが、レフェリーの合図はゴールキック。このとき、ボールは明らかに当たっていたし、はっきりと軌道が変わっていた。だがラインズマンも特に異議を唱えない。まあラインズマンはボールの軌道よりもライン(オフサイド)に意識が行っているだろう。しかし、主審はどうだっただろうか?きっとゴール前の小競り合いに注目して、ボールをまったく見ていなかったのではないだろうか。 実際に僕も現役時代ボールのないところで激しいポジション争いがあることを経験してきた。そうしたプレーを見ておいてくれよと思うこともよくあった。だが一人しかいない主審が、一つしかないボールを見れていないというのは、かなりまずいのではないかと思う。そのポジション争いがボールに関与した部分で障害になるのであればファールとするのもいいと思うが、第一にボールを見るのでなく、第一にファールを見張っておこうというような姿勢はどうなのかと思うのだ。 結局このPKもそうした見方の延長線上にあるのではないかと思える。ボールよりもそうしたボールなしの動きのところに目を光らせる。ファールがあることを前提にさばこうとする姿勢ではないだろうか。 僕は子供の頃からレフェリーはミスするものだと思ってきた。選手がミスパスするのと同じようにレフェリーもミスジャッジする。それも含めてサッカーだと。僕の高校生活最後の選手権は明らかな審判のミスジャッジで終わってしまった。当時のテレビ解説者が「これは問題になりますよ。」と発言してしまうぐらいの不可解な判定がなされ、ゴールが取り消されてしまった。よくいう幻のゴールだ。プロのなかった当時、夢であった選手権はそうして終わってしまった。だがそれでもレフェリーのジャッジは絶対なのだ。実際そうした経験をサッカー選手たちは何度も何度も繰り返しながら、諦めにも近い境地で、レフェリーも人間だと自分に言い聞かせるようになっていく。 だがだからといって、このままでいいとは思わない。もちろん個人的な見解として、ビデオ判定の導入という話には断固反対だ。そうしたミスも含めてサッカー、“人間”対“人間”の戦いを“人間”が裁くというのはサッカーの本質的なところに影響しているものであると思っているからだ。だとすると、どうするべきなのか。いかにレフェリーの質を上げていくかという問題を考えなければならない。 もちろんミスを減らすということも大切なことだ。しかし単純にミスというが、ミスには2つの種類があると思う。一つは本当に単純なミスである。レフェリーで言えば、目の前で起きたことをきちんと把握できないといったことだ。もう一つは見るべきところや見るべきタイミングといった状況判断のミスである。サッカーで言えばただのキックミスなのか、判断が悪いということなのかという話である。 副審の助けを借りながらも、広いピッチ上で起きたことを基本的には一人でさばかなければならない主審。いつ、どこで、どこを、何を見るのか。ゲームを読む力というのも必要になるだろう。きっとそれは、選手と一緒にゲームを作ろうという意識が大切だと思うのだ。「いつ悪さするんだ」というような見方ではいいゲームは成立しない。確かにボールのないところでのファールをよく見ているというのは素晴らしいことだ。だがバランスが重要なのではないだろうか。ゲームの流れを壊さず、ゲームのリズムを作る。審判としてのテクニックもそうだが、心構えとして、選手たちと一緒にいいゲームにしようという気持ちが必要なのだと思う。 もちろん僕はファールを見逃せと言っているわけではない。ファールを奨励する気もさらさらない。これでも現役時代フェアプレー個人賞を取ったことがあるのだ。ファールをせず勝つということは最大の勲章だと思っている。そして選手も味方、審判、敵を尊重して、一緒にゲームを楽しまなくてはならない。 もう一つ大切なことは観客だ。Jリーグはプロだから勝敗が大切、結果が大切だというが、忘れてはならないことは、スタジアムに来てくれた観客がまた足を運ぼうとする試合をする必要があるということだ。それなのに、試合を決めたPKの理由が分からないというのは淋しい話だ。エンターテイメントとしての魅力はどこにあるのだろうか。「あの試合どうだった?」と友人に聞かれ、「なんかよく分からないPKで鹿島が勝ったよ」ってことになるのは、そう答えたサポーターもかわいそうだし、Jリーグとしても好ましいことではないと思うのである。そういう意味では、この試合に関しては非常に残念なゲームになってしまったといえるのだ。 レフェリーに携わっている方たちもさまざまな努力をされていると思うし、プレッシャーもかかったりと本当に大変だと思う。だが、ミスを怖れず、選手たちと楽しむ気持ちを持ってやってもらいたいと思う。「ファールを見つけてやる」という気持ちでなく、一緒にゲームを作るという姿勢でやってもらえたら、きっと今よりも審判問題ということはクローズアップされなくなり、Jリーグ自体もさらに魅力あるものになっていくのではないかと思う。
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