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この特集は、相馬直樹によるサッカーの特集です。日本代表DFとしても活躍した相馬氏ならではの視点、切り口によるW杯の試合をはじめ、国内Jリーグなど国内外の試合レポート、見どころなどをお届けします。
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2006年07月27日
田中達也「おめでとう」 ~浦和レッズvs大分トリニータ~浦和レッズvs大分トリニータの試合。田中達也(No.11)の2戦連続ゴールでレッズが1-0で勝ち、2位に浮上したゲームだ。この試合全般をみると、夏場の連戦の影響が出ているなというゲームであった。またこの日は久しぶりに晴れてキックオフ時に30度を超える気温。この急激な暑さも選手たちにとって相当きつかったと思われる。 さらにボールの動きがこの日は悪かった。キックオフ時に湿度が50パーセント台、昼間も晴れていたなどの条件が重なり、芝がドライな状態になりボールが止まってしまったのだ。ナイトゲームの場合、ピッチが夜露等で濡れてくることでボールの動きが良くなるものだが、この日は違った。ここ数日雨模様の日が多かったからこういった状況でプレーするのは選手たちも久しぶり。そういったこともゲームのスピードに大きく影響していた。 さてゲームは序盤レッズのペース。とはいえ前述のとおりボールがうまく動かないことが多く、ゴールまではなかなか迫れない。レッズの1トップに対して3バックで臨んだ大分は、2シャドーの位置に入った小野(No.18)にリズムを作られてしまっていた。だが徐々にそのあたりにも慣れ、大分が長い距離のランニングからリズムをとり始める。特に目立ったのは右サイドの高橋(No.20)。アレックス(No.8)に対して積極的に長い距離を走り続けることで、何度か裏を取り、それだけでアレックスの攻撃力を半減させることに成功した。 ただ大分は本来のサッカー=“走ってスペースを使うサッカー”を披露することができない。もっと複数の人間のランニングが絡み合って、“スペースを作って、使う”といったことが出来るのだが、この日はボールの落ち着きどころが少ないこと、レッズのラインをコンパクトにしてスペースを消す意識が高かったことなどもあり、単独でのアタックとなることが多く、単発で終わってしまう。前節まではボールを奪ったあとの早さもあり、3トップが流れながら受けたり、くさびに入っても早いサポートがあったが、この日はなかなか見ることが出来なかった。 両チームとも守備に入ると自陣ペナルティエリア前5メートルぐらいに最終ラインを設定し、コンパクトにしてしまうので、なかなかスピードのある展開は見られない。すると個々の力で勝る浦和が徐々にボールを支配し始める。特にFW田中のくさびを受ける動き、裏への抜け出しといったプレーが素晴らしく、何度か個人の突破からゴールへ迫る。ゴールにはならなかったものの、カウンター気味の形から攻め残っていた闘莉王(No.4)と完璧なワンツーで抜け出し、前半一番の決定機を作った。 このあたり大分は田中を自由にしすぎてしまっていた。担当はDF上本(No.22)であったが対応が十分といえなく、前半のうちに失点してしまっていてもおかしくなかったと言える。もちろん彼一人の問題ではない。実際、3バックで1トップを見張るというのはなかなか難しいものなのだ。シャムスカのことであるから十分対策は練ってきていたのだろうが、田中の力が予想以上であったということであろうか。 後半に入るとゲームは大分のものになる。早い時間にエース高松(No.13)が負傷退場となるが、代わって入った新外国人FWラファエル(No.9)が素晴らしい働きをする。前節デビューしたばかりでコンディション含めてまだまだかなと思っていたのだが、予想以上にキープ力があり、攻撃の基点となっていた。全体を見ると大分は運動量をキープしていたが、レッズは徐々に落ちていく状態。後半頭から相馬(No.16)を投入し、はじめこそ左サイドを活性化させたのだが、全体的にセカンドボールが拾えなくなり、主導権をトリニータに渡してしまった。 前半あれだけ基点となっていた田中もチームと呼応してしまう。運動量が減り、自分から引き出す動きが出来なくなって、ゲームに埋もれてしまっていた。まあケガからの復帰明け3連戦目ということも含めればフィジカル的にも仕方のないところ。ただその状態からあの時間に最高の働きをするのだから、たいしたものだと言うしかないであろう。 リズムをつかんだ大分は、シンプルにサイドを突く動きから素早くサポートする形、くさびに素早く反応する形を増やしていく。特に後半は自慢のトゥーリオ(No.11)、エジミウソン(No.5)のダブルボランチが積極的に前に出てくるようになり、いつ大分が点を取るかと思わせる展開となっていった。また回数はそれほど多くなかったが、若い梅崎(No.21)がクリエイティブなプレーを見せてくれた。ここ2節での活躍からするともっとやって欲しかったとも言えるが、ランニングの質を含めてタレントを見せてくれた。これからも注目していきたい選手である。 さて対するレッズであるが、よくこの時間を我慢した。セカンドボールをなかなか拾えず、守備の時間が長くなってしまったのだが、前節のフロンターレ戦での守りのリズムがチームに残っていたのだろう。闘莉王を中心とした3バック、GK山岸(No.1)の攻守もありよく持ちこたえる。そのなか、久々に相手陣内でポゼッションをした時だ。鈴木(No.13)からのくさびを田中が受け前を向き、横にサポートした内舘(No.19)にパス。パスアンドゴーを基本どおりに実践すると大分DF陣はついてこれない。内舘がアウトサイドで丁寧にスルーパスを送るとGK西川(No.1)と1対1となる。これを田中が落ち着いて決め、貴重な1点をもぎ取った。 このゴールは大ケガから戻ってきた田中にとっては本当にうれしいものであっただろう。僕も現役時代、前十字靭帯断裂というケガ、約1年のリハビリというものを経験したから分かるのだが、復帰戦というだけで言葉に出来ないぐらいうれしいものだ(前々節に彼は経験済み)。さらには復帰後初ゴールというのも特にFWであれば格別のものであろう(前節に経験済み)。そしてこの日のゴールは、ケガをしたスタジアムでの悪い記憶をすべて吹き飛ばしてしまう価値ある一発であったのだ。 本人のインタヴューの中でもあったが、ケガをしたピッチにもう一度立つということは言いようのない不安があるものだ。身体が、心が、その日のことを覚えているのである。彼にとってはホーム駒場スタジアムであるし、これからもたくさんこのピッチに立つことを考えると、非常に大きな壁を打ち破ったことになるだろう。さらにこの日は大事な点を取ることもでき、彼のこれからにとって本当に大きな1歩となったと言える。 田中達也には本当に「おめでとう」と心から言いたい。
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