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Sports@nifty > スポーツレポート > サッカー特集by相馬直樹
この特集は、相馬直樹によるサッカーの特集です。日本代表DFとしても活躍した相馬氏ならではの視点、切り口によるW杯の試合をはじめ、国内Jリーグなど国内外の試合レポート、見どころなどをお届けします。
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サッカー特集by相馬直樹

シドニーを抑え込んだシステム変更 ~ACL・レッズvsシドニーFC~

 2007アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の予選リーグを、ついにJリーグ勢が突破した。まずは浦和レッズ、川崎フロンターレの両クラブにおめでとうと言わせていただきたい。僕は昨日行われた勝てば予選突破が決まるというシドニーFC(豪州)との大一番を観るために、およそ4万5千人というサポーターの集まった埼玉スタジアムまで行ってきた。先々週にはフロンターレが最終節を待たずに決勝トーナメント進出を決めていたが、昨季Jリーグチャンピオンのレッズは最終戦にまでもつれ込んでしまい、試合開始前から緊張感の張り詰めた一戦となったのだった。

 レッズは週末の名古屋戦とまったく同じメンバーでスタートした。闘莉王(No.4)を負傷で欠く3バックには、堀之内(No.20)をセンターに坪井(No.2)、ネネ(No.5)が入る。負傷のブランクからも回復しつつある相馬(No.16)は左アウトサイドに。前線はワシントン(No.21)の1トップを、小野(No.8)、ポンテ(No.10)の2シャドーがサポートしていく形だ。

対するシドニーFCは首位浦和と勝ち点1差の2位につけており、勝てば決勝トーナメント進出の切符を自力で奪い取れる立場にあった。アウェイといえども、勝ちにこだわる戦いをしに来ていたはずだ。システム的にも4-3-3の3トップを採用し、攻める意識を相当高くしてゲームに臨んできた。

 前半からレッズは、この3トップのへの対応に苦労していた。立ち上がりこそ、山田(No.6)、相馬の両アウトサイドが積極的に高いポジションを取り、サイドに基点を作りながら攻撃を組み立てていたが、相手3トップへのマークの問題で、その両サイドが上がれなくなってしまったのだった。3バックに対して3トップということは、数的同位の状況が生まれやすく、誰かが最終ラインを助けに入ることになる。ケースによってはボランチの鈴木啓(No.13)か阿部(No.22)が入ることもあるが、基本的には両サイドのどちらかがマークにつきに戻ることとなる。

 そのシドニーのウイングプレイヤーである左の12番(カーネイ)、右の14番(ブロスケ)が、予想以上にスキルがあり、積極性までも持ち合わせていたことも、レッズの両サイドが思ったように前に出られなくなった大きな要因であった。駆け引きを含めて、何とかそのウイングプレイヤーを下げさせるようにしたいところであったが、チーム全体としてミスが出ることが多かった前半は、なかなかリズムをつかむことができなかった。

 だが厳しかった前半をゼロで抑えられたことは、レッズにとって非常に大きかった。シドニーは移動してきたコンディションの面も考えて、前半勝負に来ていたことは明らかで、両サイドバックもどんどんオーバーラップするなど、先にリードを奪って逃げ切るというゲームプランを立てていたはずだった。

 後半に入ると案の定、シドニーの勢いは落ち始めた。それに反してレッズは、ハーフタイムにオジェック監督の檄も飛んだのだろう。球際の激しさを取り戻し、テンポアップした切り替えの早いプレーが見られるようになった。

 だがレッズがゲームの流れを完全につかむまでには至らない。そうしたこう着状態が続く中で先に手を打ったのはオジェック監督だった。左サイドの1対1で攻守に奮闘していた相馬に代え、長谷部(No.17)を投入してシステムをいじってきたのだ。

 阿部が左サイド、長谷部がボランチの位置へと入ったのだが、システム的には3バックとも4バックとも言える形だった。そうしたシステム的な変更よりも、マークの仕方の変更が大きなポイントであったのだ。それまでは一度下がってしまうと、相手の3トップを、3バック+両アウトサイドという5人で見ていることが多く、マークを持たない人間が後ろに2人いるという状況がよく見られていた。もちろんこうした状況は歓迎されるものではなく、マークの相手をハッキリとさせることで、そうした無駄を解消しようとしたのだった。阿部は左に入って14番をマークし、CF9番(ザドリッチ)は中央の堀之内とネネで見る。そして坪井は、左サイドに張っていた12番にマンツーマンでつくことになる。これにより山田は相手左SBの2番(ファイフ)をケアするというように、マークするべき相手をハッキリさせることを狙っていたのだった。

 マークがハッキリしたのは最終ラインだけはない。FWワシントンまで含めたチーム全員のマークすべき相手が明確となり、守備の効率は間違いなく上がったのだった。すでに足の止まってきていたシドニーがチャンスをつかむには、ドイツワールドカップの時のように身体能力に任せたパワープレーしかないように思えた。だがそのロングボールの出所さえも、マークがハッキリとしたことでレッズは抑えてしまっていたのだ。

 そうした守備の安定感が攻撃でもいい面を呼び込み、ポンテを中心にカウンター気味にチャンスを作っていく。ロスタイムには、長谷部の得意な中盤のスペースを突くドリブルからワシントンが決定的なチャンスを迎えるなど、スコアレスドローではあったが、非常にしたたかなゲーム運びをしたと言えよう。

 このゲームだけでなく、苦しんだ末にようやくつかんだ決勝トーナメントへの切符。どんなに苦しんでも最後には結果を出す、というのがレッズの凄いところでもある。さらに今後は、クラブワールドカップの切符をつかむための戦いが始まる。レッズとフロンターレが、ACL決勝の場で雌雄を決するのもいいだろう。ここからが本番となるアジアの猛者たちとの対戦を制して、そんなカードをぜひ実現してもらいたいものである。


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細貝の”熱” ~U22vs香港戦

 水曜に行われた北京五輪予選vs香港戦(香港スタジアム)のゲームでは、チームが躍動した非常にいい一戦であった。すでに最終予選への切符を手にしているU22日本代表にとって、このゲームはとても難しいものであったはず。消化ゲームとなってしまいがちな状況の中、こうしたゲームを圧倒的に勝ちきれたことは非常に評価できることであろう。

 この日のスタメンはGK西川(No.12=大分)。そして4バックに右から細貝(No.2=浦和)、青山直(No.3=清水)、伊野波(No.5=東京)、本田圭(No.8=名古屋)を並べる。ダブルボランチには本田拓(No.16=法大)と梶山(No.10=東京)が入り、攻撃的MFに水野(No.18=千葉)と家長(No.14=G大阪)が入る。前線には平山(No.9=東京)と李(No.17=)が2トップを組んでのスタートとなった。対する香港は4-5-1といっていいような守りを意識した布陣をしいて、日本を迎え撃ってきた。

 キックオフ直後から日本が主導権を握りながら攻めていく。今予選で初めて採用した4バックだったが、両サイドバックがそれこそウイングバックかのように積極的に攻撃に絡んでいく。そうした流れから、さっそく7分、李のゴールが生まれた。右サイドをオーバーラップした細貝がインステップキックでの綺麗なクロスをファーサイドに上げ、3列目から入り込んだ梶山が丁寧にヘッドで折り返す。そのボールを地面に落とさず左足ダイレクトボレーで李が叩き込み、素晴らしい形で先制点を奪ったのだった。

機能した4バック

 開始早々から、自分の前に入る選手を追い越したり、サポートしたりして非常にいいクロスを入れていた細貝。もともとはボランチを本職とする選手だが、レッズではストッパーとして頭角を現してきていた。そういった意味ではこの日は右サイドバックという不慣れなポジションであったが、非常に積極的なプレーを90分通して披露してくれた。

 左サイドバックに入った本田圭も、同様に慣れないポジションをよくこなしていた。相手が格下だったということもあるが、常に攻めの意識を持ち続け、2点目のアシスト、3点目の強烈なFKでのゴールと、得点に絡む働きで実力を見せつけた。だが点に絡んだこと以上によかったのが、バランスの取り方だった。中盤のボランチの位置に入り込んだり、サポートしたり、中央への飛び出しをしたりと、ただ外をえぐるだけのアイディアだけでなく、幅広いプレーを見せてくれた。

 こうした流動的な動きが出てきたのも、この日のシステムとも相関があるはずだ。本田拓の気の利いたポジショニングが積極的な両サイドバックの攻撃参加を可能にしていたし、家長、水野の流動的な動きも非常に効果的だった。特に水野は右サイドに張ってプレーする印象があるが、中央に入っても非常に柔軟なプレーを見せてくれていた。

 いい時間での先制点、前半ロスタイムには平山のヘディングで2点目。後半7分には例の本田圭の魔球と呼んでいい強烈なFKで3点目。その後にも水野のダメ押し点と理想的な点の取り方をしていった。守備でも大きなピンチもなく、非常に安定感のあるゲーム運びができていた。

リズムの悪いときにこそ欲しいリーダーシップ

 ただ敢えて細かいことを指摘すると、前半ゴールを奪ってから2点目までの間が空きすぎてしまったこと、その間のリズムがなくなってしまった部分などが挙げられる。前半終了間際に加点できたからいいものの、実際にその時間帯はまったりとした空気が流れてしまっていた。後半開始から動きがもう一度キビキビしだしたことから考えても、ハーフタイムに反町監督からの喝が入ったことは容易に想像できる。今後迎える最終予選では、ピッチの中で、選手たちで、こうしたムードを変えなければならないときが必ず来る。厳しいことを言うようであるが、このあたりは一つの課題としてこれからにつなげていってほしい部分である。

 だがその後半のサッカーはいい内容であったと思う。前線からのチェイス、プレッシングもかなり徹底され、ボールを奪った後のボールを追い越すための動き出しも早くなっていた。その影響もあって、スペースを創るための動きが多くなり、その出来たスペースを使った楔や、スルーパスという狙いなども見ることが出来た。

チャンスをもらった選手たちの“熱”

 また後半から起用された選手たちの積極性も目に付いた。ゴールという結果こそなかったが、何度も最前線にまで飛び出していく増田(No.7=鹿島)など、アピールしようという気持ちの見えるプレーが続いたように思う。彼らや、細貝、李といった、まだポジションを確保できていない選手たちの頑張りが、この試合通して目立っていた部分であり、チームをまさしく活性化させていた。ゴールという結果こそ平山、本田圭、水野と主力と呼ばれる選手たちのものとなったが、チャンスをもらった選手たちの頑張りが彼らの力を引き出した部分があったはずである。特に細貝の“熱”は強烈だった。「ゲームをしたい」という欲求がモニターの上からも迸っていたのを、テレビで観戦した人は感じたことだろう。その“熱“は、きっと周りの選手たちにもいい影響を与えたはずであった。

これまでと同じメンバーを招集したことからも分かるように、当初このゲームは、チームの熟成という位置付けをされていたはずだった。だが水本(No.4=千葉)が膝を痛めて途中離脱したことによって、反町監督は熟成というよりもテストという方向を選んだ。4バックの採用、それに伴う中盤の構成の変更と、今後に向けたオプションをテストするいい機会になったわけだが、果たして結果は、災い転じて福と成すと言おうか、大きな成果を得ることが出来たのだった。

だが、今後はもっと攻撃力のあるチームとの対戦もあるだろうし、それこそ凌いでカウンターという戦いを強いられるゲームも出てくるかもしれない。そう見ると、この4バックも守備においては不確かな面も多いという指摘もあるかもしれない。だが4バックにしたことによって、積極性や流動性を引き出せた事実は見逃せないし、間違いなく最終予選では大きなオプションとなるはずだ。

次のマレーシアとの対戦では、累積警告による出場停止で主力が数名出場できない。最終予選に向けて、新しい選手がさらに起用される一戦となるはずだ。ここでも今回のように高いモチベーションを持ったチャレンジャーがチームを刺激して、いい意味での化学反応が起こることを期待したいと思う。


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基点をどこに置くか ~川崎vs千葉~

 綺麗に青く晴れ渡った4月30日、Jリーグ第8節川崎フロンターレvsジェフユナイテッド千葉の一戦を解説してきた。ここまでACLを含め順調に来ている川崎と、スタートでは躓いたもののようやくジェフらしいサッカーで勝利をつかめるようになってきた千葉との対戦であった。

 この日は両チームとも試合前にアクシデントが起こる。川崎は前日のTR中に、ゲームキャプテンのMF中村(No.14)が首を痛め、この試合を欠場。河村を代わりに起用してきた。スタメンはGK川島(No.1)、3バックに箕輪(No.5)、寺田(No.13)、伊藤(No.2)。中盤はその河村(No.6)と谷口(No.29)がダブルボランチを組み、右・森(No.19)、左・村上(No.26)の両アウトサイド。トップ下にはマギヌン(No.11)、2トップにジュニーニョ(No.10)とチョン・テセ(No.16)という布陣でのスタートとなった。

 対する千葉は、ウォーミングアップ中にDFジョルジェビッチ(No.40)が足の痛みを訴え離脱。前節の負傷箇所の回復が十分でなかったようで、急遽斎藤(No.3)が起用されることとなった。スタメンはGK立石(No.1)、3バックはその斎藤(No.3)と、ストヤノフ(No.5)、水本(No.4)。中盤は下村(No.6)、佐藤(No.7)のダブルボランチに、右・水野(No.8)、左・山岸(No.16)のアウトサイド。前線は巻(No.18)のワントップに羽生(No.22)、工藤(No.20)の2シャドーと、前線の構成こそ違いがあれ、両チームともに3バックでぶつかり合うこととなった。

 前半は、風上に立ったジェフのペースでゲームが進んだ。キックオフ直後こそ、森の高い位置でのチェイスからチャンスを作るなど、川崎がいきなりゴール前まで入り込んだが、その後はジェフが主導権を取った。

ジュニーニョvs水本のマッチアップ

 千葉はまず守備からリズムを掴んでいった。全体的にマンツーマン気味の厳しい守りが川崎の攻撃陣を苦しめていた。特に水本のジュニーニョへのマンマークは強烈だった。青の10番がどこへ行っても黄色の4番が必ずいた。ジュニーニョは中盤に下がって、不在の中村の代わりにゲームを作ろうとしたが、水本のタイトマークの前になかなかボールを触ることが出来ないでいた。

川崎はボランチの位置でゲームを作る中村がいない分、出来るだけ前に基点を作って攻撃を組み立てたかったはずだ。だが、ジュニーニョだけでなく、チョン・テセには斎藤、マギヌンにも下村と、前線の3人に対してのマークがとても厳しく、前半は攻撃の糸口すら掴めなかった。そういった意味では、中村不在の影響がモロに出てしまった前半であったと言える。

 対する千葉は押し気味にゲームを進めるものの、ゴールを奪えない。序盤に佐藤が抜け出してGK川島と1対1になったシーンや、山岸の左からのクロスに飛び込んだ巻のシュートなど、何度かいい崩しを見せたが、決め切れなかった。

千葉の攻撃の狙いは大きく2つ。一つはストヤノフのゲームメイクだ。特に遅攻になったときには、ボールを動かしながらリベロのストヤノフをフリーにして、攻撃を組み立てさせる。いつものジェフのやり方だ。もう一つには前線が動きまわることでリベロの寺田を引き出し、その裏を突こうという狙いで、佐藤が抜け出したシーンはこの崩しであった。この狙いもジェフらしい形ではあるが、川崎の特徴を捉えながら強調してきていた部分でもあった。最終ラインで余るというよりは、コンパクトにするために人を捕まえに来る寺田のプレーを考えた上での狙いであったはずだ。

攻撃の基点を変えてきた川崎

両チーム無得点のまま迎えた後半は、まるっきり反対の展開となる。千葉の運動量が落ちてきたことも影響したが、後半の川崎はボールを動かせるようになり、ゲームを支配したのだった。

そのリズムを取り戻せたポイントは、ボールが前に入るよりも先に、人が前に入るようになったことだった。前半はいつもの川崎らしく、ボールが前に入ったところをすばやくサポートして連動していこうとしていた。だが千葉のマークの厳しさや、縦パスの少なさ(ここにも中村不在の影響あり)などが重なって、そのパターンを出すことが出来なかった。そこで後半は、より前で受ける位置に入って、ボールより前に人が多くいる状況を作るようになったのだった。そうすることで寺田、河村あたりが後ろからボールを運びやすくなり、後ろからゲームを作っていけるようになったのだ。そうして後ろでボールを落ち着かせてフリーの選手を作り出し、その選手が仕掛けていくことでリズムを取り戻していったのだった。

まさに象徴的なのは後半9分の伊藤のドリブルから作ったチャンスだ。千葉の選手がそれぞれ自分のマークを抱えているためにボールを持っている伊藤に対して誰もチェックに行かない。伊藤はハーフラインから何の抵抗も受けずにペナルティエリアまで入り込んだのだった。最後はリベロのストヤノフの対応でシュートまでは行かなかったが、まさにマンツーマンのウィークポイントをうまくついた形であった。

こうしたプレーが続いていく中で徐々にマークがずれることが増えてきて、ジュニーニョ、マギヌンといったあたりも前を向いて仕掛けられるようになってくる。こうなると川崎のペース。前半のリズムの悪さ、ACL含めた連戦の疲れなどを考えると、後半は厳しいかなと思っていたが、完全に流れを取り戻していた。

そうした流れの中、森の右からの素晴らしいクロスにファーサイドで待っていたチョン・テセがヘディングでたたきつけて、川崎がリードを奪った。75分過ぎの村上のヘディングも決まっていれば、ゲームは終わっていたといってもいいほど川崎のペースでゲームは進んでいた。

 だが流れが結果に直接結びつかないのがサッカー。千葉が残り10分をきったところで、セットプレーから同点に追いつく。左サイドのいい位置でのFK。水野が右足で蹴ったボールは、スピードこそなかったものファーポストに向かう正確なボール。誰かが触ればゴール、誰も触れなくてもゴールというようなコースに飛んでいった。それでも川崎の守備ラインをもう少し高く保てれば、GK川島がボールに直接アプローチできたのだろうが、あれだけ混戦の形になってしまっては川島には難しい状況となってしまった。

 結局1-1の同点。最後に追いついた千葉と勝ちきれなかった川崎。そういった意味では千葉の方が満足感は大きいかもしれない。とはいえ川崎は4月の連戦を負けなしで乗り切ったことは非常に大きい。この日は苦しんだものの、特に後半、中村を欠いた中でも川崎らしいサッカーを見せられたことは、今後も続く連戦に向けて大きな自信となるはずだ。

アウェイでポイントを奪った千葉は千葉で、納得できるところかもしれない。実際に最後は10人になりながらも(交代枠を使い切った中でストヤノフが負傷退場)奪った勝ち点1は大きい。だが巻、ストヤノフという主力の負傷は、非常に痛いはず。ナビスコカップも含めて今週、来週と連戦が続くが、攻守の核となる選手を欠いた中でも、前半のような内容を見せることが出来るのか。特にあれだけの厳しいマーキングを見せることを、今後上位に顔を出すためにも求められてくるだろう。

両チームともこのゲームで掴んだものと失ったものがそれぞれあるが、このゴールデンウィークの連戦の中で、生かしていってもらいたいものである。


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やりたいサッカーをやられてしまった柏 ~柏vs浦和~

 昨日(15日)行われた柏レイソルvs浦和レッズの一戦。国立競技場では、開幕から快進撃を続けるレイソルと、昨季の王者レッズとの激しいバトルが繰り広げられていた。

 まずは柏のスタメンを見てみよう。GKは南(No.21)。最終ラインは右から蔵川(No.23)、古賀(No.5)、近藤(No.3)、大谷(No.7)の4バック。中盤はアルセウ(No.4)、山根(No.18)のダブルボランチの前に右から阿部吉(No.11)、佐藤(No.14)、平山(No.24)の3人が並び、ワントップにフランサ(No.10)が入る。李(No.20)、菅沼(No.15)を五輪予選のために欠き、鈴木(No.22)も前日のTRで負傷と攻撃陣が大きく入れ替わってこの日を迎えた。

 浦和はいつもと同じメンバー。GKは都築(No.23)。4バックとなる最終ラインは右から山田(No.6)、坪井(No.2)、闘莉王(No.4)、阿部(No.22)が入る。中盤は鈴木啓(No.13)、長谷部(No.17)、小野(No.8)。前線はワシントン(No.21)をワントップ気味に置いて、ポンテ(No.10)と永井(No.9)がその後ろにつく形で始まる。

 序盤から両チームとも激しくぶつかり合い、五分五分の展開で進んでいく。どちらも主導権を渡さないために、特に中盤のつぶし合いが激しく、ゴールに近づく形がなかなか生まれない。

 ホーム柏レイソルは、J1復帰一年目となる今季、ここ(5節)まで負けなしの首位という快進撃を続けてきた。その原動力は石崎サッカー=プレッシングサッカーの徹底にある。フランサ、菅沼、李、鈴木といった攻撃での元気のよさもさることながら、ここまで1失点という守備の充実が最も大きい。この守備を支えるのが前線からの強烈なプレッシングであり、ボールへのアプローチを前面に押し出した守備が柏の特徴と言える。

今季最高の内容を見せた前半のレッズ

 だがレッズもこの日、そのプレス、球際の厳しさ、攻守の切り替えという面で、非常にレベルの高いものを見せる。レイソルのプレスを受けていなすのでなく、プレスをかけ返していったのだった。今季のレッズはボールへのプレスが甘く、マークがルーズになることも多かった。5試合で6失点と、昨季から比べるととても磐石とは呼べない状態だったのだが、この日の立ち上がりは、素晴らしい内容でレイソルと打ち合ったのだった。

 そうした中、アクシデントがレイソルに起きる。石崎サッカーの体現者・山根が負傷退場してしまったのだ。山根とは川崎で2年間一緒にプレーしたが、彼のよさは読みと、ボールを奪う力である。中盤の底に位置し、かけたプレスの破られそうなところをことごとく読んで、ボールを奪っていくのだ。この日も序盤、何度もレッズを囲い込んだところで最後にボールを彼が奪い、前線のポイントとなるフランサにボールを入れていた。だが、その山根が競り合いの中で左ひざを痛めてしまったのだ。

 チームの中心としての責任感からピッチに戻ったが、そこに本来の山根のプレーはなかった。ボールを数人で囲んでもボールを取りきれないシーンが続くようになってしまったのだ。試合後本人も「ムリして戻らなければ良かった」と話していたが、チームとしてのプレスが効かなくなったのはあのあたりから。その分、レッズの攻勢が強まっていったのだった。

 コンパクトなラインを保つ柏最終ラインだったが、そこを浦和はついていく。ワシントン、永井が飛び出し、時には小野も裏を突こうとする。序盤こそボール保持者にプレッシャーがかかっていたため、ボールが出てこなかったが、この時間での状況は違った。ハーフライン付近でボールを持った闘莉王が、鈴木啓が、長谷部が余裕を持って顔を上げられる。そこからDFラインの背後にボールを落とすことは簡単なこと。26分の先制点もまさにこの形から生まれたのだった。

 その後山根がリタイアし、石崎監督は小林祐(No.13)をリベロに据えて3-5-2に移行する。再三突かれていた背後のスペースへのケアをしたいということと、前線のターゲットを2枚にして攻撃の基点を作りたかったのだろう。だが傾いた流れはそう簡単には止まらなかった。レッズの攻撃陣は柏のプレスをいとも簡単にかわし、フリーな選手を作り出し、ゴール前までボールを運ぶ。守備面でも攻から守への切り替えが非常に早く、特に坪井、鈴木啓が反撃の糸口すら作らせない。38分には小野が2点目を追加し、圧倒的浦和ペースのまま前半を終了した。

 だが後半は全く違う展開が待っていた。水曜にACLで相当タフなゲームを戦ったレッズが後半落ちてくるのは予想されていたが、後半ここまで大きく流れが変わるとは思っていなかった。

 後半頭から2トップとして出場したドゥンビア(No.35)がまずリズムを作る。強さとスピードを併せ持つコートジボワール人FWは、前線でポスト、飛び出し、ドリブルとレッズ守備陣に圧力をかけていく。中盤でのプレスの続かなくなったレッズは、少しラインを低めに設定した中で対応していくが、明らかに防戦一方になっていった。

光った谷澤のプレー

 その浦和をさらに混乱に陥れたのが、54分に投入されたMF谷澤(No.28)だった。トップ下に入った谷澤は今季ここまで出番も少なく鬱憤も溜まっていたはずだが、それを吹き飛ばすような素晴らしいプレーを見せたのだった。飛び出したり、動きなおしたりという谷澤の動きにレッズ守備陣はついていけない。またパス&ゴーでの連続した動きもレッズにとっては相当イヤだったはずだ。フランサのポストプレーからのシュートや、胸でのコントロールからリフティングしての右足ボレー(トヨタカップでのプラティニの幻のゴールを髣髴させる)など、強烈なインパクトを残した。

 だが、守りに入ったときのレッズの強さはその上を行っていた。GK都築を含めて最後は抑えてしまう。今季は終盤に失点、追いつかれる、といったことが多かったが、この部分でも昨季の強さを取り戻しつつあるのだろう。

 だが後半の出来には決して満足できないはずだ。前半とは全く違う姿を見せてしまったわけだが、それは数字にも表れている。レッズのシュート数は前半10本に対し、後半はゼロ。カウンターもままならなかったわけだ。レイソルのリスクマネジメントもしっかりしていた(特に小林祐の働きは良かった)し、連戦の疲れといったこともあろうが、前半と後半の戦い方、ペース配分は今後の課題となってくるはず。これからも厳しい日程が続くことを考えると、コンディション調整を含めてクリアしていかなければならないだろう。

 レイソルは、後半光が見えた部分もあった。しかし前半の内容は相当なショックなはずだ。やりたいプレッシングを、どちらかと言えばレッズにされてしまったのだ。菅沼、李の不在、鈴木の欠場、山根の負傷退場とマイナスポイントが襲ったこともあったが、誰が出ても同じようなサッカーを出来るよう石崎監督は考えているはず。昨年はJ2で序盤戦に連勝したものの、他チームが対策を施してきた第2クール以降、思ったようにポイントを重ねられず苦しんだ時期もあった。そういった意味でもここからが正念場。強烈なプレッシングからスピーディーな展開を披露する、そんなレイソルらしいサッカーを今後も見られることを期待したい。


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おぼろげながら見えてきた北京 ~U22代表・シリア戦~

 北京五輪2次予選グループ中、最も実力のあるU22シリア代表を聖地・国立に迎えたU22日本代表。予選が始まってからここまでの2戦では、大切な勝ち点を着実に積み重ねてきてはいるものの、内容的には物足りなさの残っていた反町ジャパンであったが、この日のゲームは、今後に向けての明るい話題を提供してくれる結果、内容だったのではないだろうか。

 日本のスタメンを見てみよう。GKはケガから復帰した西川(No.12)。最終ラインは右に青山(No.3)、センターに伊野波(No.5)、左に水本(No.4)といういつもの3人が入る。中盤はダブルボランチに本田拓(No.16)と梶山(No.10)の2人。アウトサイドには右に水野(No.18)、左に本田圭(No.8)が入る。そして前線は、MF家長(No.14)を2列目に配置して、平山(No.9)と李(No.17)の2トップという、この予選初めての形で臨むこととなった。対するシリアは、昨年末のアジアカップで対戦したときと監督も選手も大きく変わっており、この日は3-5-2という布陣で臨んできた。

 序盤から日本は、2トップを採用した攻撃ユニットがそのよさを見せ、攻撃を組み立てていく。だが、立ち上がりのシリアはそれ以上に攻撃の意欲が高く、日本にとっては危ない時間帯であった。シリアは、ボールを追い越す動きを多用するなど、積極的に人数をかけて攻撃に出てきていた。ファールで無効となったが、FWイブラヒム(No.10)がゴールに蹴りこんだシーンなど、ペナルティボックス付近までボールを運ばれてしまった回数も多く、そういった意味では、先にゴールを奪われてしまってもおかしくない立ち上がりであったと言える。

だがその時間を、安定感のあるセーブを見せたGK西川を中心にしのいでいくと、2トップと1トップ下という、新しい攻撃ユニットを中心とした攻めが形になり始めていった。

自由に動いてリズムを作った家長

その中でも最大のポイントとなっていたのは、家長だった。ここ最近の家長は、ガンバ大阪でのゲームも含め、アウトサイドというよりもトップ下のポジションでプレーすることが増えている。そうしたポジションにおいて、相手のDFラインと中盤との間のスペースでボールを受けることができ、チームの攻撃のリズムを作ることができる選手なのだ。彼が自由に動いてボールを引き出すことによって、チーム全体が落ち着いて攻撃に移れるようになっていたのは見逃せないところだ。

シリアは、最終ラインを浅くしてそのスペースを消そうとはしていたのだが、それに対して2トップの裏への動きだしと、家長の自由に動いてボールを受けるという、ギャップの作り方がうまくはまっていて、シリアはなかなか日本の前線3人を捕まえられずにいた。序盤、シリアがペースを掴んでいたものの、攻撃自体は期待を抱かせる流れを見せていたのだった。

 そうした中、日本に待望の先制点が生まれる。16分のことだ。右サイドで水野がプレッシャーを受けながらも、逆サイドにいた家長まで一発のサイドチェンジをする。このサイドチェンジが素晴らしかった。家長がボールを受けた瞬間には左サイドの本田圭と2対1の状況ができていたのだ。家長は外を追い越していく本田圭をおとりに使って、内側に切れ込み右足(!)でミドルシュート。ファーポストの一番上の、GKからしたらどうしようもないところに吸い込まれていった。見ていた誰もが、「右足に持っていったら、ダメだ」と思ったであろうが、いい意味で期待を裏切るスーパーショット。水野のサイドチェンジ、本田圭のオーバーラップ、家長の思い切りと、3つの良さが生み出した貴重な先制点であった。

 そしてその8分後には、水野のFKから平山が3戦連続のゴールを頭(肩?)で奪うと、シリアは攻撃のキレ、そして意欲も失ってしまった。序盤から飛ばしてきた、シリアのモチベーションを奪うのに十分な先制点、そして追加点であった。攻撃面でのシリアは非常にスキルもあるし、連動性を意識したサッカーを展開しようとしていたのだが、守備での甘さは致命的であった。昨年末のアジア大会での対戦のときにもそうした傾向は見受けられたが、この日もマーキングの甘さ、ボールへのプレッシャー不足を露呈してしまっていた。

 そうした中、3点目を奪いに日本は攻め続けるが、2点取ったことで余裕が出たのか、それともプレッシャーが弱いことによって、球離れが悪くなってしまったのか、人とボールの動きが悪くなってしまう。その影響もあるのか、ラストのプレーの精度も下がってしまい、なかなか追加点を奪えないまま、前半を終了する。アタッキング・サードでの精度という、いつもながらの課題が顔を覗かせてしまった。

 後半の立ち上がりも、前半終盤同様、まったりとした感じで進んでしまったが、カレン(No.11)の投入でゲームが再び動き始める。前半から積極的に攻撃を牽引した家長だったが、疲れからか後半消える時間が長くなってしまい、チーム全体の攻撃のスイッチが入らなくなってしまっていたのだが、代わってカレンが攻撃のリズムを作るようになったのだった。幅広い動きで、抜ける動きと創るプレーの両方を見せ、さらにはいい平山との関係も見せ、本当にいいプレーをしてくれた。そのカレンの素晴らしいパスから平山の3点目が生まれたのも偶然ではなかった。

見えてきた“チームのまとまり”

 その他にもこの日はたくさんの積極的なプレーを見ることができた。水本の再三再四に渡るオーバーラップや、前半終了間際のプレーに象徴される、本田拓の激しく戦う姿勢など、個人の頑張りが目に付いた。しかしそれ以上に印象的だったのは、先制ゴール後の選手たちの姿だった。ビューティフルゴールを決めた家長に、ほぼ全員が集まってきて、祝福をしていたのだった。これまで彼ら世代のすべてのゲームを見てきたわけではないので、はっきりしたことは分からないが、このチームではこうした姿を見せたことはあまりなかったのではないか。そういった意味では、チームとしてのまとまりが出てきたのではないのだろうか。そうした、いい一面が表れたシーンだったのではないかと思う。

 もちろん、サッカー自体としても、最後までコンパクトなサッカーの意識が保たれており、チームとして機能していた。落ち着いたビルドアップをして、前線の動き出しに合わせたり、その動きを使って中盤でフリーになる家長や、李、またはカレンが受けたりして、そこに周りがさらに絡んでいく。そうした同じ絵を描いてプレーできている時間が長かったのではないかと思う。

 本当に素晴らしいゲームを披露したU22日本代表であったが、もちろん課題がなかったわけではない。これまでも失点の多かったリスタートの守備では、0に抑えたものの、危ない形もいくつかあった。また、ビルドアップ時にパスコースを作る意識が高かったことも影響しているのだろうが、守備に切り替わったとき、最初の楔に対して甘いことが何度か見受けられ、攻撃しているときの守備の準備が物足りなかったことも気になる点だ。

 そしてなんと言っても、3点取った後に、もう2点は確実に取らなければならなかったことだ。この日は3点のリードがあったかもしれないが、決めるべきところは決める。これを常に繰り返していかなければならない。この日の勝利で2次予選通過は一気に近づいたが、このあともっと厳しい最終予選が待っている。サッカーの世界では言い尽くされてきたことであるが、決定力、そして集中力を高めていってもらいたいものである。

真価の問われるアウェイでのシリア戦

 今回はシリアのコンディション不足や、守備の甘さというものもあった。あれだけ自由になっていた家長をいつまでも捕まえられないのは、あまり考えられないこと。リベンジに燃えてくるであろうアウェイでのシリア戦は、もっと厳しいものになるはずだ。真価の問われる次戦、反町ジャパンはどんなサッカーを見せてくれるのだろうか。


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